クールなオオカミの過剰な溺愛
スルーするべきかどうかと悩みつつ、とりあえず門を通ろうとすれば。
「あ、あの…すみません」
よく通るソプラノの声が耳に届いた。
その女子に話しかけられたのだ。
「は、はい…!」
少し俯き加減だった私が顔を上げれば、ナチュラルメイクの清楚である彼女が視界に映った。
「その、授業とかって…もうとっくに終わってますよね…?」
「あっ、はい…もう校舎に人はほとんどいないと思います。誰か探しているんですか?」
質問を聞くからに、ここの学校の生徒に用がある様子。
「あの、はい…えっと、水瀬真問って男の人、知ってますか…?」
お互い初対面だからだろう、途切れ途切れの話し方になってしまう。
けれど彼女の口から放たれた“水瀬真問”という言葉に、私は目を大きく見開いた。