クールなオオカミの過剰な溺愛
まだ帰る生徒が多い時間に来たからだろう、キョロキョロしながらこちらに向かっていて。
明らかに緊張している。
「───美織」
水瀬くんが彼女の名前を呼んだ。
久しぶりに見たのだろう、その瞳は揺らいでいる。
恐る恐る足を進める美織さんを見て待ちきれなくなったのか、水瀬くんも彼女の元へと向かう。
「美織…!」
「……あ、真問───」
それから彼は大胆な行動へと出た。
まだひと通りの多い時間帯だというのに、堂々と美織さんを抱きしめたのだ。
もう離さないぞ、とでも言いたげに。
力強く。
人気者の水瀬くんを知らない生徒はほとんどいないため、辺りは騒がしくなる中。
「……美織」
何度も彼は美織さんの名前を呼ぶ。
そして彼女も泣き出しそうになった。
ああ、想い合っているふたりはとても素敵だと。
ふたりを見て素直に思ったんだ。