クールなオオカミの過剰な溺愛



とりあえず煌哉を追いかけて隣を歩き、置いていかれないよう彼のシャツを掴んでやる。

シワになってしまえ、と心の中で毒を吐きながら。



「どうだ、これで先に行けないからね!」
「……強引だな」

「機嫌を損ねる煌哉が悪いの!」


私は決して悪いことをしていない。
先手を打ったのは煌哉だ。


「別に不機嫌じゃねぇし」

いや、絶対に不機嫌だ。
心なしか声のトーンも落ちている気がする。


「…やっぱり敵対視してるの?
水瀬くんのこと」


きっと煌哉は今の席が嫌で不機嫌なのだろうと思った。
おそらく間違ってないはず。


なぜなら彼は“水瀬くん”の言葉にピクッと反応を示したからだ。


「場所考えろ」
「場所…あっ」

軽く睨まれた私は、彼の言葉にハッとした。

< 57 / 300 >

この作品をシェア

pagetop