太陽と月

颯介はそう言って私をジッと見る。


「そんな事ない!陽介は手を出さない事で私を守ってくれた!弱さの中に強さがあるよ!」声を荒げて言うも


「…違うよ。陽介は弱い。臆病者だ。勝つ自信がなかったんだ。」そうあざ笑った。


どうしてそんな事言うんだろう。
陽介と颯介は血が繋がってなくても兄弟でしょ?10年以上一緒に過ごしてきた家族でしょ。
陽介は颯介の事を大切な人だって言ってたのに…。


そう口に出して言いたかったけど、言えなかった。


弱いのは私だ…。


「違う…」やっと言えたのはそれだけだった。


「だったらさ、何で椿は助けを呼びに行かなかったの?」そう微笑む。


「それは…怖くて…動けなかったから」
あの時は怖くて怖くて、足が動かなかった。助けを呼びに行きたかったけど、足がすくんで動けなかったんだ。


「違うね。椿が怖かったのは自分に報復がかかるのを恐れたからだ。助けを呼びに行こうとしたら、低脳な奴らにあっさり捕まって、自分にも被害が及ぶと考えたからだろ?」微笑みを崩さず、私に問いかける。


「…ちっ違う!」必死で否定するも、あの時の自分の気持ちを思い返す。


違うね …違う…私は本当に…


「…どうして颯介はそんな事ばっかり言うの?私達、家族でしょ?陽介は家族でしょ?」手に力をギュッと入れて颯介に言った。爪が手のひらに食い込んで痛いと思ったけど、こうでもしないと言えなかった。


そんな私の言葉を聞いて、目を丸くする颯介。


そして、可笑しそうに声を出して笑った。


「…何が可笑しいの!?」


それでも笑う事を辞めない颯介に苛立ちを覚えた。


「いや、椿が可笑しな事言うからだよ。家族?誰と誰が?」そう言うと笑うのをやめた。
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