太陽と月

「誰と誰って…」颯介の質問の意図が分からなかった。


「僕と陽介はたまたま同じ施設にいた。そして、たまたまあの男に拾われた。家族なんかじゃない。ただの同居人だよ。そして僕と陽介はあの男の飼い犬だ」


「…でも陽介は!」さっきの陽介の笑顔が頭に浮かぶ。
こんな私を含めて大切な人達だって言ってくれた。


「陽介は馬鹿だよね。いつか母親が自分に会いに来てくれてると信じてる。あの男が親切心で自分を助けてくれたって信じてる。ほんと、おめでたい奴だよね」馬鹿にした様に言う。



バッチーン


気付けば私は、颯介の頬を叩いていた。


これで人生二度目だ。


颯介は、叩かれたにも関わらず笑って


「いいね。その目。人を軽蔑するような目だ。それでこそ本当の椿だよ。やっぱり椿はこっち側の人間だ…」


私は颯介が怖いと思った。
何を言っても動じなくて、この人に感情という物はあるのだろうか。


「僕たちの中には、倫理、道徳、正義そんなものは無いよ。そんなもの持ち合わせてる奴はただの偽善者だ」と笑う。


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