太陽と月
「うん。分かった」私は頷く。


陽介は少しハニカミながら、
「俺さ、椿の前だと何かホッと出来るんだよね。俺の方が年上なのにな」と笑った。



私は、少しでも陽介の喜ぶ顔が見たかった。自分の為にじゃなくて、ただただ陽介の笑顔が見たかった。


その為なら私は、偽りの自分でいる事を選ぶよ。


朝食を終えて、陽介と並んで学校に行った。


途中で、沢山の人に声をかけられる陽介。


「どったの!?その怪我!?」
「大丈夫かよ?」
「どうしたの?何かあったの?」
「痛くないの!」


全て陽介の怪我を心配する声だった。その度に陽介は


「歩道橋の階段から足を踏み外して転げ落ちた」と笑って返事をしていた。


私は何も言うことなく、ただただ陽介の隣に、ぎこちない笑顔で立っていただけだった。
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