太陽と月
颯介の声に気付いた進藤先輩は両手を挙げ、颯介の方を振り向く。
「手は出してませんよーナンパしてただけでーす」とおちゃらけて言った。
「颯介…」私が小さく名前を呼んだけど颯介は私の方を見なかった。
「そんな怖い顔すんなよ。分かってますよ。手は出さないから」と意味深に颯介に言う。
「さて、椿ちゃんをデートに誘ったのですが、“従兄弟”の颯介さんの許可はいりますか?」と少し笑いながら颯介に問いかける。
「別に、僕の許可なんていらない。椿が行きたいなら行けばいい」そう冷たく言い放った。
進藤先輩はその言葉を聞くと私の方を振り返り
「だって。椿ちゃん。俺とデートしてくれる?」と微笑んだ。
私は颯介を見ると、目を逸らされる。無性に苛立ちを覚え
「分かりました。進藤先輩とデートします」そう言っていた。
進藤先輩は携帯を取りだし
「じゃあ番号とアドレス交換しよ」と微笑む。
私もおずおずと携帯をポケットから出してアドレスと番号を交換した。
交換が終わって満足そうに進藤先輩は笑った。
「じゃあ椿ちゃんまた連絡するね」と手を振りその場から去って行った。
必然的に颯介と二人になったけど沈黙が流れる。
「あのね…!」と言う私の声を遮って
「精々楽しんで」それだけ言うと進藤先輩の後を追い掛けて行った。