太陽と月

残された私はその場で携帯を握りしめた。進藤 純平と言う新しい名前が登録されていた。


何故、進藤先輩が私なんかに声をかけてきたのか、この時は気付けなかった…。






「椿!何処行ってたんー?遅かったやん!」と美月が駆け寄って来た。


私はさっきの事を言おうと思ったけど、結局言わずに


「うん。ちょっと休憩してた」と嘘をついた。


「えー!大丈夫なん?準備抜け出して帰る?」そう心配そうに聞いてくる美月に申し訳ないと思った。


美月には嘘をついてばっかりだ。
そんな自分に自己嫌悪に陥る。


「はぁ?帰るとかあり得ないんだけど!」

「でも、にしにしコンビなら帰れって感じだよね」


「西田の方は駅前のカフェに入り浸ってるらしいよ」


そんな事を、遠巻きにいたクラスの女子達が聞こえる様に言ってきた。

にしにしコンビとは私達の事だ。
入学式で主席として、あるまじき発言をした私と、言いたい事を何でも言っちゃう美月はクラスメイトから完全に浮いていて、二人まとめてその名称で呼ばれている。


私は、女子達の言葉が気になって仕方ない。周りに何を思われているのかそればかり気にしてしまう。


いい子の自分で居たい。だから入学式での発言は本当に後悔をしている。


「ほんまうっざいわ!だいたい、にしにしコンビってネーミング何やねんな?売れてへん漫才師かよ!だっさいネーミングつけんなよなー!」と負けじと言い返す美月に、女子達はキッと睨んで来たけど、それ以上言う事は無かった。


美月はいつも、そうやって私を庇ってくれた。私もいつかは、美月を守る事が出来るのかな?
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