太陽と月

「椿さん、作って差し上げてはいかがですか?」ニコニコとサラッと言うマリ子さん。


でも、私には自信がない。お弁当を作る事も、自分だけを守る殻から抜け出す事も。


「でも…」


「私もお手伝いしますから!」とウインクをしてくれるマリ子さん。


まぁ学校で渡さず、家を出る前に渡せば女子特有の妬みややっかみを避ける事が出来ると思い


「分かった!でも、味は保障しないよ。」そう言ってお好み焼きを口に入れた。


「ヨッシャ!」とガッツポーズをする陽介を見てると、少しだけ楽しみになってきた。


それはきっと、相手が陽介だからだ。陽介は打算的な考えを一切持っていない。ただ純粋に相手の懐に飛び込んで来る。


私とは大違いだから、追い掛けたくなる。







「ご馳走様」そう言って立ち上がったのは颯介だった。


いつもなら、それだけ言ってリビングから出て行くのに今日は違った。


「椿、純平とのデート何時になったの?」颯介の口から出たのは、陽介には知られたくない事だった。


「椿、進藤とデートすんの?」陽介は少しだけ眉を上げて私に聞いてくる。


「いや、えーと。何か偶然誘われちゃって」の濁して答えた。


颯介は私の答えを聞く前に、リビングを後にした。初めから私と進藤先輩のデートの日取りなんて気にもかけてないんだ。


ただ、陽介の前でデートの事を言いたかっただけだ。そう思った。
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