太陽と月
「ご馳走様!」陽介も両手を合わせ、出されたご飯を全て平らげた。
「陽介、お弁当何がいい?」そう尋ねると
「唐揚げと卵焼きは絶対!あとおにぎり!鮭とおかか!」そうニカッと笑って
「じゃあ俺はちょっと走り込みして来るね」そうリビングを後にした。
唐揚げと卵焼きか…。作れるかな?そう思いながら、マリ子さんと後片付けをした。
お弁当を作る時のアドバイスを貰いながら頭の中にメモをしていく。
後片付けを終え、私もリビングを後にする。
リビングを出ると、玄関で靴を履く颯介がいた。
出掛けるのかな?
「颯介!」私が呼ぶと振り向く事なく
「何?」声だけが返ってくる。
「どうして、さっきあんな事言ったの?」私は聞きたかった事を聞く。
「どうして?“家族”とのコミュニケーションじゃん」“家族”というキーワードをわざとらしく強調する。
「でも…!」
「あっ陽介に知られたくなかった?男とデートするって事。美月ちゃん達ともデートして、純平ともデートするんだもんね。男好きみたいだよね」と振り返り、口元を上げて笑う。
陽介には、美月達とダブルデートにする事になった事は話していた。
陽介は、楽しんでおいでと笑ってくれた。
「違うよ!」そう否定するも
「違わないね。自分がそんな女だって事を陽介に知られたくなかったんだ。陽介の前では純粋無垢な椿でいたいもんね」そう続ける。
「何でいっつも意地悪な事言うの?」颯介の言ってる事は当たっている。
陽介には、嫌われたくない。出会った時からそう思っていた。
颯介は再び私に背中を向けて
「椿が…“陽介”の事ばっかりだからだよ…」それだけ言うと玄関の扉を開けて、夜の闇に消えて行った。
ふと窓から外を見ると、今日は真っ暗な闇が広がるだけで月はそこにいなかった…。