太陽と月

私は部屋に戻り、溜息をついた。自分と言う人間が分からなかった。


いつも、前を向いて私に手を差し伸べてくれる陽介の背中を追い掛けたいと思う。


その反面、何を考えているか分からないけど、こんな私の事を受け止めてくれる颯介の横に居たいとも思う。


誰にも嫌われたくない。独りにはなりたくない。


本当の自分はどれなんだろう?
そう鏡を見る。


そこには無表情の自分がいた。
小さい頃ママに言われた事を思い出す。


「…あ…女の子はいつも笑っていなさい。でもね、本当に心から信じる事の出来る人の前では泣いていいんだよ。自分の事さらけ出していいんだよ」


そんな事言われた気がする。
私の前の名前は何だったんだろう?


何故か思い出せなかった。


椿の前はどんな私だったんだろう?


有希ちゃんを陥れた自分が本当の私だったんだろうか?


あんな事をしたのは私…?


目を瞑って過去を遡ってみたけど
そこには、ただただ暗闇が広がるだけだった…。
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