太陽と月

私はその痛みに蓋をする様に、話を変える。


「そっ颯介!おはよ!天気良くなって良かったね!体育祭日和だね!お昼からのリレーどっちが勝つかな!?私は、どっちも勝ってほしい!あっそれだと勝負にならないか?」

自分でも何を言ってるか分からなくなった。


必死に自分の感情を隠す為の私の話に颯介は返事する事なく、キッチンを出てリビングの椅子に座った。


そこにいつも居る筈の陽介が居なかった。まだ走り込みから帰ってないのかな?


「マリ子さん、陽介は?」


「陽介さんはもう学校に行きましたよ。準備が色々とおありみたいですよ」私は唖然とする。


嘘でしょ!?お弁当どうするの!?と1人で焦る。


予定では学校に行く前に渡す筈だったのに…。


私は慌てて、リビングに行き颯介に声をかける。


「颯介!お願い!陽介にお弁当届けて!」私があまりにも必死の形相だったのか少し驚いた表情をしたが、直ぐにいつもの表情に戻り


「自分で届けなよ」と冷たく言い放つ。


「でも…」躊躇する私に颯介は頬杖をつきながら、真っ直ぐこっちを見た。


「椿は陽介の為なら、何でもするんだよね?きっと陽介はお弁当を届けて貰ったら笑顔になるね」と言う。


私はキュッと下唇を噛み、颯介を見る。そこには目を逸らす事なく、私の目を捉える冷たい眼差しがあった。


「…持って行くよ。陽介と約束したから」私はそれだけ言うとキッチンに戻り、お弁当箱を袋に入れた。



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