太陽と月

部屋に戻り学校に行く準備をする。


少し早めに行って陽介にお弁当を渡さないと…。出来たら誰にも見られたくない。人気者である陽介と歩いているだけで、女子達に心ない言葉を浴びさせられる。


指定のジャージーを着て、階段を降りると河口さんと玄関で会った。


「椿さん、おはようございます。今日は体育祭ですね。頑張ってきて下さいね。」そう微笑んだ。


「おはようございます。はい!ありがとうございます」私も微笑み返す。

「今年も陽介さんと颯介さんのリレー対決が見物ですね」


「どっちが勝つんだろう?」私は聞いた。


「2年連続で颯介さんが勝ってますからね。今年はどうでしょうか?」河口さんは顎に手を置き首を傾げる。


そして、私が手に持っているお弁当に目を移すと


「椿さんのお弁当を食べると陽介さんの勝つ確率はグンと上がるかも知れませんよ」とニコリと笑ってくれた。


私は少し照れてしまった。


「じゃあ行って来ます!」


玄関のドアを開くと、太陽の光が眩しく思わず目を瞑ってしまったけど、私は駆けだした。


それが、悪夢の幕開けとは気付かずに……。
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