太陽と月
学校に着くと、まだ登校している人達はまばらだった。
私は一度自分の教室にカバンを置きに行き、お弁当が入っている袋だけ持ち、陽介の教室に向かう。
陽介の教室に向かう途中で、チラチラと視線を感じた。
1年と3年はジャージーの色が違うので、無理もない。
ましてや、入学式であんな事を言ったのだから良くない印象が残っている訳だし。
それでも、私は陽介の教室だけを目指して足を進めた。
陽介のクラスである、3-Aの教室の前に着き小さく深呼吸をする。
恐る恐る教室のドアを開けると、中に居た人達が一斉にこちらを見た。
「誰?」
「1年じゃん」
「ってかあの子って……」
そんな声が耳に聞こえる。私はそんな声を聞こえないふりして、キョロキョロと教室を見渡した。
そこには陽介は居なかった為、教室のドアを閉めようとした時、1人の声がした。
「あっれー?椿ちゃんじゃん。どったの?」
進藤先輩だった。進藤先輩は颯介と同じC組みの筈なのに、なんでここに居るんだろう?と疑問に思った。
「…えっと…」私は反射的にお弁当の袋をサッと体の後に隠す。
「あっ!何で俺がA組に居るの?って顔してるー!ほら、俺交友関係広いからさー」と聞いてもないのに、そう言いながら私に近付いて来た。
「あっ!椿ちゃん、約束しているデートなんだけどさ映画とかどう?見たい映画あるんだよねー!ってか何か隠してない?何持ってんの?」
進藤先輩は、周りに知られたくない事を一気にスピーカーの様に全体に発信した。