太陽と月
予想通り、教室がざわめく。
「は?純平君とどういう関係?」
「デートって何?」
「ってか何か持ってない?」
私はその場に居ることが耐えきれず、来た道を引き返そうとした時
右手をギュッと掴まれた。見なくても分かる。進藤先輩だ。
「おっ、これお弁当じゃん!もしかして、陽介に?」とわざとらしく大声を出す。
私は目の前が真っ暗になった。そして後悔をする。教室に来る前に、陽介にメールの1本でも送れば良かったと。
そんな事考えても、後の祭だ。
私は進藤先輩の手を振り払った。
進藤先輩は気を悪くした感じもなく、
「陽介なら生徒会室にいるよ」とニコリと笑った。まるでこの空気感を楽しんでいる様な笑顔だった。
私は何も言わず、その場から離れた。
最悪だ。これで3年の女子の先輩達に睨まれる事が確定したも同じだ。
お弁当なんて作るんじゃなかった…。
そんな事を思いながらも、折角作ったお弁当を届けたくて生徒会室に向かう。
早足で向かっていると後ろから、呼び止められる声がした。
「西園椿さんー!」
声のトーンで分かる。この声は好意的なものでは無く、憎悪が交ざった声だ。
私は振り向く事なくその場で立ちすくむ。
そんな私にさらに声がかかった。
「西園さんだよねー?無視しないでくれるー?」勿論、こちらの声も好意的なものではなかった。
私はグッと拳に力を入れて振り返る。
そこには、3年のジャージーを着た、女3人がこちらを睨んでいた。
真ん中の女はいかにもリーダー格って感じで腕を組んでいる。
左右の女は腰に手を当てて少し、一歩後に立っていた。
私は震える声を必死で押さえ
「はい」と返事をした。