太陽と月

「そっち生徒会室なんだけど、1年が何の用な訳?」右隣にいた先輩が口を開く。


「…」声を出そうとするも、言葉が出ない。


「黙ってんじゃねーよ」と今度は左隣にいた先輩が聞く。


「…えっと…」やっと出た言葉は簡単に遮られ


「陽介にお弁当を持って来たんだよね?」と真ん中の先輩が不気味な笑みで口を開いた。


分かってるんだ。私が生徒会室に向かっている理由を。何を言っても最悪な結果が待っていることは一目瞭然だ。


「…」何も言わない私に3人が近付いて来る。


生徒会室近くにはクラスは無いので、生徒や先生が通る気配はない。


私はゴクっと唾を飲み込んだ。


「ちょっと、話そうよ」と真ん中の先輩が相変わらず笑みを崩すこと無く、顎で視聴覚室に入れと指示を出した。


入りたくなかったけど、こんな姿誰にも見られたくなかったから、仕方なく指示に従い、視聴覚室に足を入れた。


「ってかさ、あんたマジ調子乗ってんだよね!」

「従兄弟か何か知らないけど陽介に近付いてんじゃねーよ」

「ブスが気軽に近付くなよ」

入るなり、理不尽な言葉が次々とかけられた。


私はこの時が過ぎるのを黙って待とうと口をギュッと結ぶ。


そんな姿に苛ついたのか、1人の先輩が私に近付き、お弁当の袋を取り上げる。


「アッ…」そう小さく口から出たけど遅かった。


取り上げられた袋は床に叩きつけられた。


叩きつけられたお弁当は次は足でガンッと蹴られる。


「ってかさ、陽介があんたと居るのは“捨て子だから同情”してるだけだよ?」とリーダーっぽい先輩に言われた。


他の2人と違って笑っているけど、その笑顔に好意的なものは一切感じられなかった。


「…そんなんじゃありません。陽介は…そんな人じゃないです」黙っているつもりが、勝手に口から言葉が出ていた。


「はぁ?何言ってんの!?マジ勘違いだから」と1人の先輩が私に近付き、ドンっと肩を強く押してきた。


私はその反動でよろめき、尻もちをつく。


「気軽に呼び捨てにしてんじゃねーよ!ブス!」


「マジうざいわ!」


「生意気なんだよ!」


うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。


私は耳を塞ぐ。やっぱり辞めとけば良かった。こうなる事は分かっていた筈だ。



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