太陽と月
『おはよー!』
と廊下から足音と共に声がする。
誰かが来たんだと思ったけど、その声は遠ざかっていく。
視聴覚室に朝から来る生徒なんて居ないから、その先にある生徒会室に用事でもあるんだろう。
「こいつ、純にも近付いててマジウザイ!」
純とは進藤先輩の事だろうか?さっきの進藤先輩が頭によぎる。
すると、視聴覚室に入ってから黙っていたリーダーっぽい先輩が口を開く。
「可哀想な子。親に捨てられるなんて欠陥人間なんだね。」と笑った。
“欠陥人間”その言葉が頭に響く。
私がいい子じゃないから、ママに捨てられたんだ。
私が欠陥人間だから…。
涙がこぼれ落ちそうなのをグッと堪える。
絶対に泣きたくなかった。
こんな奴らの前で泣くもんかと思った。
「ほんとウザイ!」そう言って、床に転がっているお弁当を再度蹴られた。
「2度と、陽介に近付くなよ!」そう捨て台詞を残し、満足げに3人は出て行った。
残された私は、暫くその場に座り込み動けなかったけど、ポケットに入れていた携帯の音で我に返る。
携帯を開くと美月からのメールだった。
おは!寝坊しちゃった!ギリギリに行くね!
私は、了解!だけ返信をして携帯を閉じる。
転がっているお弁当を手に取り、中身を見るとお弁当箱の蓋は開き、袋の中で中身は散乱していた。
とてもじゃないけど、人様に渡せる状態では無かった。
私は溜息をつき袋を閉めて立ち上がった。
ジャージーについた埃を払い視聴覚室を出た。
直ぐに教室には戻りたくないと思い、生徒会室には行かず屋上に向かった。