太陽と月

いつもとは違う颯介の優しさに思わず涙が出そうになるのを堪える。


颯介はそれ以上何も言うことなくただ黙って横に居てくれた。


すると、おもむろにお弁当袋を開ける颯介。


「あっ…」止める間もなく颯介は中身を覗いた。


「グチャグチャでしょ。それじゃあ渡せないよね」と苦笑してしまった。


颯介は何も言わず私の頭をポンと叩くと、袋の中で散乱している卵焼きを口に入れた。


まさかの行動に驚く私を尻目に、次は唐揚げを口に入れる。


「…颯介!食べなくていいよ」
私が止めたにも係わらず、次々とオカズを口に入れていく颯介。


その行動に押さえていた涙が頬を濡らした。


暫くすると、


「ご馳走様。オニギリは昼に食べていい?」そう微笑む颯介がいた。


「あっ…ありがとう。颯介、ありがとう。ありがとう。」何度もお礼を言った。


颯介がそんな事してくれるなんて思ってもなかった。


「さぁ椿、馬鹿な女共に逆襲するとするか!」とニコリと笑った。


その顔は先程の穏やかな笑顔ではなく、いつもの冷たい笑顔だった。
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