太陽と月

颯介は、マイクを返しまた気怠そうに歩き始めた。


向かっている先は、私の方だ。


他の生徒達は、そんな颯介を敢えて見ない様にしている。


私はこの場から去る事も考えたが、足は動かなかった。動きたくなかった。


一歩二歩と颯介が近付いて来る。


私は無意識に手を差し伸べていた。


そして、私の目の前まで来た颯介は私の手を取り微笑んだ。


そして誰にも聞こえない声で私に


「小さな”逆襲“終了」と呟いた。


私は何も言える事は無かったけど、繋がれた手からは暖かいものを感じた。


「本当の捜し物は、椿だよ」と繋がれた手にギュッと力を込めた。


反対の手で、颯介が私に紙を見せる。


私は紙の文字を見て涙が溢れ出した。


そこには…









“大切な人”


そう書かれていた。
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