太陽と月
颯介に取って“大切な人”が私である事が嬉しく思った。
私は颯介に手を引かれるまま、ゴールに向かった。
いつもなら、周りの目が気になるけど何故か全く気にならなかった。
私達が手を繋いでゴールに向かう姿は異様に映っていたのか、周りが固唾を飲んでこちらを見ていた。
『おっと!ここで最後の選手、西園が従兄弟である西園 椿の手を取りゴールです!果たして、西園が引いた紙には何が書かれていたのでしょうか?』馬鹿みたいなアナウンスが耳に入ったけど、どうでも良かった。
ただ、ゴール付近に待機していた陽介が心なしか寂しそうな目をして、私をジッと見つめていたのが気になった。
「はい!ゴール。べべになっちゃったね」そう颯介は、私に微笑んでくれる。
アナウンス部の生徒が私達に駆け寄り
『西園選手!堂々と最後テープを切りました!西園選手!紙には何て書かれていたのでしょうか?』マイクを向けられる颯介が何を言うかドキドキした。
『…内緒です。まぁ2人の秘密って事で』そう言った。
私達は、2つ目の秘密が出来た。
“大人になったら母親を殺しに行こう”残酷で醜い約束を交わした秘密
“椿は大切な人”儚くて愛おしい秘密
私はその、2人だけの秘密が、奈落の底で生き抜く希望だったよ------。