太陽と月
胸倉を掴まれた颯介は、陽介には触れず両手を挙げる。
「いいの?生徒会長がこんな事しちゃって」
ただならぬ空気に周りの生徒が固まっているのが分かる。
「颯介!いい加減にしろ!お前どうしちゃったんだよ!昔は…」
陽介の言葉を遮り、颯介が冷たく言い放つ。
「…なーんも知らない癖に。この甘ちゃんが…お前には椿は……い」
最後の方は聞こえなかったけど、陽介の顔色がサッと変わったのは分かった。
「颯介ー!」
颯介の胸倉を掴む力が更に強くなった気がして、私は体が勝手に動いていた。
「陽介!辞めて!」私は陽介の腕を掴んだ。
私に腕を掴まれた陽介は、ゆっくりと颯介の胸元から手を降ろした。
そして、私の方をどこか悲しい目で見ると小さく呟いた。
「…颯介を…」
この険悪な雰囲気にようやく気付いた先生がこっちに来た。
「2人共なにしてる!?」
先生が来た事でいつもの陽介に戻った。
「すみません!ちょっとした兄弟喧嘩っす!直ぐに自分の任務に戻ります!颯介!悪いな!」そう言って、周りの生徒にも冗談を交えながら、人混みの中に消えていった。
颯介も、私に何も言わずその場から立ち去って行く。
私達を見ていた生徒も先生に促され、バラバラに散って行った。
残された私は、ただただ陽介の言葉だけが頭の中から消えなかった。
“椿は颯介の味方なんだね”
その裏に隠された、君の本当の思いに私は気付かなかった-------。