太陽と月
『それでは、皆さん!午後からの部スタートです!最後に3年によるクラス対抗リレーが見物ですので、お楽しみに!』アナウンス部の軽快な声で午後からの体育祭が始まった。
私達は、昼からの出番は殆ど無かったので美月やクラスメイトと談話をしていた。
「明日なぁー椿とダブルデートすんねん」美月が頬を赤らめて皆に言う。
「ええ!いいなー」
「相手どんな人?」
「何処行くのー?」
集まった女子達がキャッキャと盛り上がる。
「私の思い人はこの人!」と携帯の画面を見せる。
「えー男前!」
「何か大人って感じ!」
「羨ましい」
美月が卓也さんの写真を見せた事で更に盛り上がった。
「高校生やねん!めっちゃ緊張するわー!椿フォローしてやー!」
「…フォロー?」
何をすればいいんだろう。
「そう!フォロー!美月めっちゃ可愛い!とか、美月めっちゃ賢い!とか、美月おしとやか!とか」
「西田さん…おしとやかは無理じゃない?」
1人のクラスメイトが笑いを堪えながら言ったら周りもうんうんと頷く。
「めっちゃおしとやかやし!アホちゃん?とか絶対言わんし!」
そう言うと、笑いが起こる。
私は凄く楽しいと心から思った。
「ってか!西田さんとか言わんでええから!美月で!椿の事も椿で!なっ!椿?」とにっこり笑って私を見る美月。
美月も陽介と一緒でこうして、相手との架け橋になってくれる。
「うん。勿論」私は微笑んだ。
私は、クラスメイトから椿と呼ばれる様になり、クラスの仲間になれたと嬉しくなった。
小さな事だけど、幸せだと感じた。
空を見上げると、雲一つなく太陽が私達を暖かく照らしていてくれた。
ずっとこの暖かさが続くと信じていた。