太陽と月
「1人の男としてやって!陽介先輩どう言う事なんやろうな?」横にいた美月が少し興奮気味に言った。
きっと、朝の借り物競走の時に颯介に挑発されたからだと思った。
『それでは、B組アンカーの古田選手!意気込みは?』
『チームの皆を信じて頑張ります!』ありきたりな言葉だったけど一大イベントだからか、それでも盛り上がる。
次は颯介だ…。何故か胸が高鳴る自分がいた。
『それでは!C組アンカー西園 颯介選手!兄弟である生徒会長に宣戦布告をされましたが、今の心境は?』
マイクを向けられる颯介。
『…』
押し黙る颯介。
『あの…西園颯介選手?』もう1度マイクを向けられる。
『…奈落の底…』
『は?』
『奈落の底にもほんの小さな光が差し込めばと思う。』
意味不明な発言だったから、周りの生徒から戸惑いの言葉が聞こえる。
でも、私には分かったよ。
貴方と私にしか分からない秘密のメッセージだと。
『…意味深な心境ですね。それではD組のアンカー……』
その後のアンカー達の意気込みは耳に入ってこなかった。
ただただ、颯介のメッセージを噛みしめた。
颯介、貴方はいつでも渡しを翻弄させる。
「颯介先輩も何か意味深やなー」隣で美月が呟いた。
「そうだね。何言ってるんだろうね」私も理解出来ないフリをした。
このメッセージの意味を知っているのは世界中の中で私と颯介だけでいい。