太陽と月
頭の中で、進藤先輩の言葉が響き渡る。
“契約で結ばれた関係”
思ってもいなかった言葉だった。
「あっ言っちゃった。俺らの秘密の。内緒だよ?」そう言って私の頭をポンと触る。
「…嘘…」ようやく出た言葉は嘘であって欲しいと思いを込めたものだった。
「嘘じゃないよ。颯介に聞けば分かる。そしたらまた、椿ちゃんと颯介は2人だけの秘密が出来て、君は優越感に浸れるね」
そう言って笑った。
この人は何を言ってるのだろうか。
まるで、今日のご飯どうしようか?そんな他愛ない会話の様に話す。
「そんなの…颯介が…」
「可哀想?」
その言葉に私はキュッと唇を噛んだ。
「そんな事思ってないよね?椿ちゃんが今思っているのは…」
「颯介に比べたら私はマシだ。そう思ってるんじゃないの?」そう微笑む進藤先輩が怖くなった。
この人は、颯介とは違う怖さを持っている。
人が不幸になる事を本当に心から望んでいる…そう感じた。
何も言えない私に対して、進藤先輩は大きく溜息をつく。
「つまんないね。もっと俺を楽しませてよ?椿ちゃんの貪欲で汚い部分を見せてよ?」そう挑発するように笑った。
「私は…颯介の傍にいる。そんな関係じゃなくて…心から颯介と居たいと思ってる!」何故だか泣きそうになった。
あまりにも颯介が…
“可哀想”だと思った。
「ふーん。それは楽しみだね。」そう微笑み、私をその場に残し帰って行った。