太陽と月
反抗期…その言葉に違和感を覚えた。
颯介は自分の事を
“飼い犬”だと言っていたから。
「椿、お前と颯介はよく似ている」
先程までの穏やかな笑顔は消え、あの時と同じ目で私を見つめる。
私にママを捨てろと言った日の目だ。
何も答えない私に、真也さんは続ける。
「…人を信じてない。自分すらも。その癖、人から愛されたいという願望は誰よりも強く持っている。」
全てを見透かした様に言われた。
「確かに椿も颯介も親に捨てられた。それは絶望だったかもしれない。でも、いつまでもそんな過去にとらわれて生きるのは勿体ないよ」
真也さんは私から目を逸らす事なく、真っ直ぐな言葉をぶつけてくる。
その言葉が今の私には重くのしかかる。
「…私、部屋に戻る」その場から逃げ出したかった。
真也さんは止める事は無かったけど、私の背中に向かって
「椿、颯介を頼んだよ」まるで本当の父親の様に、自分の息子を心配している様に、私に言った。
私は何も言わず、ドアを閉めた。
部屋に戻り、今日一日の出来事を思い返してみた。
たった一日で色んな事があった様に思える。
そして、早く颯介の元に行きたいと思い窓を開けた。
夜空を見上げると、微かではあったけど、月が私を照らしている。
慌てて、窓を閉めていつもの場所に向かった。