太陽と月

「お礼?」


「うん」


私は颯介が望むものは何でもあげたい。颯介が望むなら、何でもする。


それが例え誰かを傷つける事であっても。


「何でもあげるよ」そう言った私の手からタバコを取り、地面に落とす。


「約束して。僕から離れないって。僕もそう約束したから。」



“椿が望むならずっと傍にいる”


「約束するよ。私は絶対に離れない。」


私はそう言って颯介の頭を撫でた。
怒るかな?と思ったけど、颯介はされるままだった。


「どんな僕であっても、僕から離れないで」まるで祈る様な声で呟く颯介を愛おしく思う。


私は気になっていた事を聞こうと決心をした。


“契約で結ばれた関係”進藤先輩が言ってた事が私の頭から離れない。


「…颯介は進藤先輩と友達?」


「友達だよ…」今にも消え入りそうな声で答える。


「本当に?」


「じゃあ椿は美月ちゃんと友達?」


「友達だよ」


「本当に?」


「本当だよ」


同じ事を言う私達は顔を見合わせて笑った。


まるで、子どもがイタズラをしたみたいに。


颯介は私の手の中から抜け出すと、再びタバコに火をつけた。


「純平はね…アイツが僕に与えたオモチャだよ」


そう言って煙を月に向かって吐き出した。
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