太陽と月
颯介が吐き出した煙が暗闇に舞う。
さっきまでの穏やかな空気感は消え、冷たい空気が私達の間に吹いた気がした。
「…オモチャ?」
「純平は…金で雇われた僕の“お友達”なんだ。だから、純平は僕の言う事なら何でもする。僕が命令を下したらそれが犯罪であっても…」そう笑った。
その目には光がなかった。
「…そんな」言葉が出てこない。そんな事無いと思ってた。
「椿に酷いことを言わせたのも、木下が椿に牙を向くように仕向けたのも僕の命令だったからだよ」そう言って私の髪の毛を掬う。
嘘だ…。確かに進藤先輩はいつもタイミングよく現れて、私の心をえぐる様な言葉をかけてきた。
でも何の為に…?
「どうして…」
颯介は私の髪の毛をグッと掴むと自分の方に引き寄せた。
「だって絶望を感じた椿は僕に助けを求めるから…」
颯介は声を出して笑った。
あぁこの人は私を手にいれる為なら手段を選ばない。
私を傷つける為なら何でもする。
それは残酷で恐ろしい事の筈なのに私は、そんな颯介の傍にすら居たいと思った。
「どう?傷ついた?悲しい?僕が憎い?」
私は答えずに笑った。
「大丈夫。どんな颯介であっても傍にいる。約束したから。」
颯介は一瞬、驚いた様に目を見開いたけど、直ぐにいつものクールな顔付きに戻り
「狂ってるね。でもそんな椿が愛おしく思う」そう言うと私のオデコに口づけをした…。