太陽と月
「もしもし?」電話に出ると


「椿~!!今どこおるん~?私らもう待ち合わせ場所やねんけど~!」美月の声が耳に響く。


「ごめんごめん。直ぐに行くね」と言って電話を切る。


「タケさん、美月達もう待ち合わせ場所に居るみたいなんです」そう言うと


時計をチラっと見て


「まだ10分前じゃんね。じゃあ行こ」と笑った。


はい、と返事をして歩き出そうとした時、電話の前にタケさんが言いかけていた事が気になった。


「タケさんさっき何か言いかけてませんでしたか?」私の質問に少し、黙ったタケさんは


「あ~何もない!あいつら待たせたらうるさそうだから急ご!」と笑う。


私は少し、首を傾げたが待たせてはいけないと思い、待ち合わせ場所に足を走らせた。









「椿~!タケ君!」遠くで美月が左手を振っているのが見えた。
右手の手は卓也さんと繋がれていた。


まさか・・・と思い近づくと


「椿~!」と卓也さんの手を離し私に抱き着いて来る。


「遅くなってごめんね」謝る私に美月は笑顔で


「全然大丈夫!それより・・・私達付き合う事にしてん!」と満面の笑顔が私に向けられる。


だから手を繋いでいたんだ。卓也さんの方を見るとニコっと笑われた。


その笑顔は恋人が出来て嬉しくて溜まらないっ思っている美月の笑顔とは違って満足げな笑顔だった。


「そうなんだ!良かったね!おめでとう!」そう笑顔で言ったけど、心の中にドロドロとした物が溢れ出て来るのが分かった。


すぐにその感情に蓋をする為に、


「本当に良かったね!」と美月の手を取った。


「ありがとう~!」そう言うと私の手をさっと離し、再び卓也さんの手を握りに行った。


私は離された手をぎゅっと強く握る。爪が掌に食い込み痛みを感じるほど握りしめた。

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