太陽と月
「何だよ~!お前ら付き合ったのかよ~!」とタケさんがからかう様に卓也さんの肩を軽く押す。


「ま~ね」とニヤリと笑う卓也さんが何故だか不気味に見えた。



「これからどうしよっか?飯行く?」と卓也さんが言う。


「え~私、2人でご飯に行きたいねんけど~」美月が甘えた声で卓也さんの顔を覗き込んだ。


私は何か言わなきゃ・・・そう思ったけど声が出なかった。


「折角4人で居るんだし、皆で行こ?」と卓也さんが美月をなだめる。


卓也さんになだめられた美月は私の方をチラっと見る。
その目はまるで”邪魔”と言っている様に見えた。


そんな事ある訳ないのに、そう思ってしまう自分が嫌になる。
それでも私の口から出た言葉は


「私は今日帰っていいかな?昨日の体育祭の疲れがまだ残っていて」嘘の言葉だった。


きっとこの言葉を美月は望んでいる。付き合ったばかりなんだから、恋人と2人になりたいのは当たり前の事だと自分に言い聞かせる。


「大丈夫??ほな椿は帰って休んだ方がいいんちゃう~?」と心配をしてくれている言葉にすぐ後に“帰った方がいい”と言われ少なからずショックを受けた。


そんな心情を悟られまいと


「大丈夫!今日はありがとう!帰らせてもらうね・・・あっ!でも駅までの道のり分からない。タケさん送ってくれない?」と嘘に嘘を重ねる。


疲れているのは事実だけど、ご飯行くくらいの気力もあれば駅までの道のりも分かっている。でも私は美月の”友達”だから嘘をつくんだ。この嘘は美月を為枝だと自分の言い聞かせた。


黙って私たちのやり取りを聞いていたタケさんが口を開いた。


「じゃあ俺は椿ちゃんを送っておくよ。俺もそのまま直帰するわ」と笑顔で手を挙げた。





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