太陽と月

施設にいた頃は、季節の行事はあったけど、ささやかなもので私は小さな子の面倒を観ていたから”楽しい”って言うには想い出が少なすぎる。





施設にいた頃は「いい子」になる事に必死で色んな事を我慢して気がする。





「いい子」にしていればママが迎えに来てくれると信じていたからだ。





あぁ、ダメだ。忘れようとしたママの事を思い出してしまう。



きっと記憶の中のママの笑顔と陽介の笑顔が似ているからだ・・・。





そんな事を考えていると顔の目の前にヒラヒラと振られる手が見えた。





『椿~?どーした??』





どうしよう・・・この今の気持ち言っていいのかな?





『何考えてる?何か困った事あれば言えよ』





明るく言ってくれる陽介に思わず





『あのねっ!ママ・・・と陽介の笑顔が似てるなって。』





その言葉を聞いた陽介は少しだけ悲しそうな顔をして





『椿、ママに会いたい?』





会いたい?





でも私は数時前にママを捨てたんだ。





ママも私を捨てたから・・・・。





でも本当は・・??





『あ・・会いたい・・。でも私はママに捨てられたから・・。』





泣きそうになるのをグッと堪えた。





強くなるって約束をしたから。





そんな私も見て、陽介は私の頭をポンポンとしてくれた。





『そっか。会いたいよね。ねぇ椿?椿はママに捨てられてないよ』





そう優しく微笑んでくれた。
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