太陽と月
タケさんが発した言葉が理解出来なかった。
さっきまで美月と付き合った事を2人で祝福したばかりなのに。
「…何で…?」ようやく出た言葉はストレートな疑問だった。
「…ごめん。これ以上は言えないんだ。でも…椿ちゃんは関わっちゃダメだ。」苦しそうにタケさんが言った。
それだけじゃ納得出来ない。だって美月と卓也さんは付き合っているんだから。
「そんなの納得出来ない!ちゃんと理由教えて!」私はタケさんに駆け寄って聞いた。
タケさんは目を少し伏せて何も言わなかった。
2人の間に沈黙が流れた。
「…ごめん。」その言葉が沈黙を破ったけど、これ以上タケさんが何か言ってくれる雰囲気ではなかった。
「だって美月と卓也さん付き合ったんだよ!?」
美月の笑顔が頭に浮かぶ。本当に嬉しそうだった。
何も言わないタケさんは私を真っ直ぐ見つめて、もう1度
「ごめん」それだけ言うと私に背中を向けて歩き出した。
追い掛けてちゃんと理由を聞かないと。
そう思ったけど、足は動かなかった。
それは美月に“邪魔”と言っていた様な目が浮かんだから。
私は悪くない。
卓也さんがどんな人なのか私には関係ない。
そんな思いが心を汚す。
結局私はタケさんを追い掛ける事なく駅に足を向けた。