太陽と月
偽りの愛
駅から家までの距離が遠く感じた。
早く会いたい気持ちからか自然と足取りは早くなる。
今日は天宮さんの授業も河口さんの練習も無い日だから、出掛けてなければ颯介は部屋にいる。
部屋にいて欲しいと思いながら急いで帰った。
「ただいまー」玄関の扉を開けると
リビングからマリ子さんがひょっこりと顔を出し
「椿さん、お帰りなさい」と笑顔で返事をしてくれる。
「ただいま。颯介と陽介は?」
マリ子さんに確認を取る。
「陽介さんは体育祭の打ち上げで外出していますが、颯介さんは部屋で休んでおられますよ」と教えてくれる。
その言葉で嬉しく思った。
颯介は部屋にいるんだ。
何から話そうか?そんな思いで一杯になった。
私はマリ子さんに返事をして階段を駆け上がる。
颯介の部屋の前に着き深呼吸をしてドアを開けようとした時、ドアが開いた。
急にドアが開いた事にビックリする。
ドアが開いた事にビックリしたのではなく、ドアを開けた人が颯介ではなく天宮さんだったから…。