太陽と月
突然の天宮さんの姿に驚いている私をお構いなしに、真正面に座る。


「お友達との約束では?」笑みを崩さず私に質問を投げかける。


あれは、あの場から逃げる為の嘘だった事を分かっている様な口ぶりだった。


「あ~友達来れなくなっちゃったみたいです」


ばれていると分かっていながらも嘘をついた。


「そうなんですか。私はてっきり逃げたんだなって思っていましたよ」


笑みを崩さないでいる天宮さんが逆に不気味に見えた。


何も答えれない私に対して


「颯介さんから聞いたんですよね?私達の関係」


“私達の関係”その言葉がまるで恋人同士みたいなニュアンスに聞こえた。


「・・・えっと・・・」


何て答えるべきか頭をフル回転させるも、何も出てこない。


「彼は孤独でいつも一人なんです。だからきっと甘える人が必要としているんですよね」


天宮さんが言う言葉の1つ1つには、勝ち誇った様に聞こえる。


まるで、颯介は自分のものだと言っているかの様に。


「・・・それで・・・颯介は・・・救われるの?」


ようやく口から出た言葉だった。


その言葉で一瞬、天宮さんの笑顔が崩れる。


「彼は寂しくなると私を求めてくる。普段はあんなにクールなのに、私の前では違う。何度も何度も私の体を求めるの」


いつのまにか、天宮さんは雇われている家庭教師とではなく、”一人の女”として私に言葉をぶつけてきた。


「貴方、そんな風に男性から求められた事ある?息をするのも勿体ないと思うくらいキスをした事ある?彼はいつも私に求めてくる」


そう言ってニコリを微笑んだ。


「・・・ありません」


私は何を馬鹿正直に答えているんだろうか。


「仕方ないわ。だって貴方はまだ”子ども”だもの」


馬鹿にした様に鼻を鳴らして笑った。


「・・っ・・」


何か言わなきゃ・・そう思った時に


「お待たせしました。ミルクティーとアイスティーお持ちしました」


店員さんが2つのグラスを私達のテーブルに置きにきて、言い返すタイミングを失った。


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