太陽と月
1人取り残された私は、途方に暮れていた。


ミルクティーの氷がカランと音を立てる。


音を立てた氷は、どんどん小さくなりミルクティーに溶けて消えて無くなる。


まるで私の心の様だ。


暫く、その場に座っていると


「椿!」私を呼ぶ声がした。


声の持ち主は、陽介だった。


何で・・・。


どうして・・・。


「・・陽介・・」



「店の前通ったら椿が見えたから!」そう言ってほほ笑んでくれた。


「あっ・・ちょっと寄り道」笑えていたか分からないけど、笑顔を作る。


「友達は?」何も疑っていない素振りで私に聞く。


「うん・・・。寝坊しちゃったみたい」


またこうして嘘をつく。嘘ばっかりだ。


「そっか!そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ?」


時計を見ると結構な時間が経っていた。


「わっ!やばい!」そう言って慌てて立ち上がると、テーブルの脚に自分の足が引っかかりこけてしまった。


「椿!」こけた私に手を差し伸べてくれた。


君は、いつも私を救ってくれる。


闇に落とされた私に手を差し伸べ、光がある方へ導いてくれたね。


私は、その手を掴む事が出来なかった。


こんな時でも私は最低な事を考える。


どうして・・・


どうして・・・颯介の手じゃないの?


そんな事を考えていた。


その思いが、どれほど陽介を傷つけていたのだろうか。


私は何も分かっていなかった。

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