太陽と月
チャイムが鳴り、美月の周りに集まっていた生徒達が席に戻って行く。


美月も私の後ろの席に座る。


「椿!いつの間にかおらんくなってたやん。どうしたん?」美月が小声で私に話しかけてきた。


嘘つき。気付いて無かった癖に。


そう思ったけど言葉には出さなかった。


だって”友達だから”


私は振り向いて


「ごめんね。体育祭の疲れ取れてなくて」と笑顔で答えた。


美月は笑顔でそっかだけ言うと直ぐに携帯を開き嬉しそうにメールを打ち始めた。


もう私の姿は美月に映っていない。


小さくため息をつき、前を向く。


その日の休み時間も昼食も美月といつも通り過ごしたけど、話題は全部卓也さんの事ばかりだった。


放課後になり美月に声をかける。


「美月!今日、買い物行かない?浴衣見たいの」


陽介を約束した花火大会の浴衣が欲しかった。


「ごめん!卓也さんと会う約束してるねん」美月は顔の前で両手を合わせ申し訳なさそうに言う。でも顔は笑顔で一杯だ。


「そっか!楽しんで来てね」私は微笑み返す。


ちゃんと笑えてたかな・・・。


美月は直ぐに教室からいなくなった。


仕方ない。1人で街に出掛けようと思い、カバンを持って私も教室を出た。






賑わう街を1人で歩いていると孤独を感じる。


寂しさを感じてしまう自分に


“元から1人ぼっちじゃないか”と言い聞かせた。


そんな風に思っている内に、自分が歩いていた道が繁華街から外れていた事に気付く。


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