太陽と月

マリ子さんに詰め寄られ、タジタジになる陽介。


『いや…あの…えーと…』


よっぽどマリ子さんが怖いのか目が泳いでる陽介が可笑しくて笑ってしまう。


『ちょっ!椿!何笑ってんだよ!?椿のパーティーの準備をしてたんだぞ!』


私の為に?


『陽介さん!だったら私に声かけて下さい!あんなにキッチン汚して!陽介さんは出入り禁止です!お食事の準備なら私がやりますから。』


と更に陽介にマリ子さんは詰め寄った。


よっぽと怖かったのか、陽介は小さく


『はーい』と身をひいた。


マリ子さんは陽介から離れ私にニコリと微笑み


『さて!椿さんのお好きな食べ物、嫌いな食べ物はありますか?』


と聞いてくれた。


『あっ…大丈夫です。何でも食べれます。』


と返事する私に


『椿、ここでは我慢する必要ないんだよ。』


陽介が優しく言ってくれた。


我慢する必要ない。


施設では嫌いな物でも食べてたし、誕生日パーティーの時は一応好きな食べ物をリクエスト出来た。


でも、いい子でいる為にずっと我慢をしてた。


『いいの?』


恐る恐る聞くとマリ子さんが


『勿論です!ただ嫌いな物が多すぎるのは困りますけどね。』


といたずらっ子の様に笑った。


『あの…好きな食べ物は、ハンバーグとエビフライで、嫌いな食べ物はピーマンです。』


と小さく言うと陽介がケラケラと笑った。


『子どもかよ!好きな食べ物ハンバーグとエビフライ、嫌いな食べ物ピーマンって!』


ケラケラと笑う陽介をキッと睨むマリ子さん。


『陽介さんもさほど変わりませんよ!』


と言われ黙る陽介が可笑しくて思わず笑ってしまった。


こんな何気ない会話が出来るなんて昨日まで思ってなかった。
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