太陽と月
案内されたキッチンは陽介が使用した所は本当に汚れていたり、物が散乱していた。
大きくため息をついたマリ子さんだったけど、気を取り直して手を叩き
『では、椿さん始めましょう!お料理の経験はありますか?』
と聞かれ
『一応、一通りは出来ます。』
施設では栄養士さんの人が居たけど、私もお手伝いをしていた。
いい子になる為に、ママが迎えに来てくれた時に、少しでもママの手助けが出来る様にと。
そんな私にマリ子さんは微笑み
『そうですか。椿さんは偉いですね。』
褒めてもらう事がこんなにも嬉しく思えるなんて。
マリ子さんと遥先生は少し似ていると思った。
遥先生もいつも私の事を褒めてくれた。
でも、施設ではいつの間にか私が色々とする事が当たり前になっていた。
『椿さんは手際がいいですね。動きに無駄がないです』
野菜を切る私を見て、マリ子さんがほほ笑む。
嬉しく思っていると
『椿さん、ハンバーグの隠し味知っていますか?』
隠し味・・・??
首を横に振る私に
『少しだけ、マヨネーズを混ぜるんですよ。そうするとコクが出ます。ある程度、焼けたらフライパンに水を少し入れて蒸し焼きにするんです。そうすると肉汁を逃さないんですよ』
そう教えてくれた。
もし、ママと料理をしたらこんな感じなのかな?
そう思った。
マリ子さんは料理について色んな事を教えてくれた。本当にその時間は楽しくて、私自身も色々と話をした。そんな会話の中で気になってる事を聞いた。
『マリ子さん・・・颯介ってどんな子?』