太陽と月
今日だけで、色んな人に出会った。
信也さん、本庄さん、陽介、河口さん、天宮さん、陽介の友達・・・。
信也さんは少しだけ、冷たい印象を持ったけどそれでもどこか信用出来ると思ってしまった。他の皆もいきなり来た私を暖かく迎えてくれて、私の目を見て話してくれる。
でも、颯介だけは私の事を一切見てくれなかった。
まるで私なんて存在しない様に・・・・。
マリ子さんは少しだけ考えて
『颯介さんは・・・、賢明な方ですね。自分の歩くべき道をしっかりと分かっていらっしゃいます。それが例えイバラの道であっても・・・』
その時のマリ子さんの顔は何だか寂しそうに見えた。
『イバラの道・・・?それって・・』
その時、プッシューーと鍋から何かが溢れる音がした。
『あ~~~~!ブロッコリー茹でたの忘れてた!』
私は慌てて、中のお湯が溢れだす鍋の火を消しに行った。
それからは、質問の答えが返ってくる事はなく、他愛もない話をしながら夕食の準備をした。
この時は颯介が歩いている、”イバラの道”の意味は分からなかった。
ねぇ、貴方と歩いた道は確かに”イバラの道”だったね。でも、貴方は真っ直ぐ前だけを見ていつも歩いていた。でもどんな道でも貴方は手を差し伸べるのではなく、ただ隣に寄り添ってくれたね。