太陽と月
“誇りと完全なる美しさ”
それがどんな者なのか私には理解が出来なかった。
私がママを捨てて、新しい名前で生きていくのがいいの?
首からかかっているマリア様のネックレスをギュッと握りしめ下を向く。
男はそんな私を見て更に理解しがたい言葉を並べる。
『椿、俺の所に来い。今日からお前は俺の娘になるんだ。』
この男は何を言ってるのだろうか?
ポカーンとしていると遥先生が私の体を自分の背中に隠してくれた。
『貴方何言ってるんですか?莉愛ちゃんを貴方の元になんか行かせる事は出来ません!』
今までに聞いたことのない声で男に怒鳴ってくれる。
あぁ、私はやっぱり遥先生が好きだ。
いつだって私の味方だ。
そんな遥先生に、顔色も声色も変えずに男は
『手続きは終わっている。椿は今日付で俺の娘になるんだ。』
意味が分からなかった。
遥先生も負けじと言い返す。
『貴方みたいな人に、莉愛ちゃんを幸せに出来るとは思いません!』
男はそんな遥先生に、冷たく言い放つ。
『幸せに?誰が?俺がこいつを幸せに?何言ってる。幸せになれるかどうかは、こいつ次第だ。未来もこいつ次第で、幸せにもどん底にもなる。俺がこいつに与えるのは何不自由なく暮らせる場所を与えるだけだ。』
私は遥先生にギュッと抱きついた。
すると男がそんな私を遥先生から引き離し
『椿、俺の所に来い。自分で幸せな生き方を見つけろ。自分の手で未来を作るんだ。』
男の目は凜としていて、私は目を逸らす事が出来なかった。
男はもう一度言った。
『椿、一緒に行こう。』
と手を差し伸べた。
私は何を思ったのか
男の手を取っていた。