太陽と月
『こっち側の人間・・・?』
颯介は、ベンチから立ち上がり私の前に立った。
身長が高い颯介に見下ろされると威圧感があった。
そして私の顎をグイっとあげて
『よく思い出して?椿は人の幸せを願う奴?本当にそうだった?』
何を言っているのか分からなかった。
私は・・・私は・・・?
『ねぇ椿?椿は、自分より他人が幸せになる事を誰よりも許せない筈でしょ?』
怖いと思った。心からこの人が怖いと。
でも・・・何故だか目を逸らす事が出来なかった。
何も言えない私に追い打ちをかける様に、颯介は続ける。
『いい子の椿なんて嘘っぱちだ。本当は誰よりも貪欲で、誰よりも自分だけの幸せを考えてる。人の幸せなんて壊れてしまえと思っている!いや自ら壊したい!そう思ってるだろ?思い出して椿はそういう奴だ』
“他人が幸せになる事を許せない、人の幸せなんて壊れてしまえ”
それは誰の思い?
誰の言葉?
違う・・・。違う・・・。私はそんな事思った事ない。
毎日教会で、マリア様にお祈りをしてた。
『ママが迎えにきますように。皆に幸せが訪れますように。』
そうお祈りしてた・・・筈・・・。
本当に・・・?本当に・・・?
お祈りしてたのは誰?本当に私は”皆の幸せ”を願ってた・・・??
一気に記憶が施設にいた頃に戻された。
あれは・・・暑い夏の日だった・・・。