太陽と月
次の週、由貴ちゃんの里親が最終面談の日がやってきた。
私は2階から、里親になる2人が車で入って来るのを見ていた。
本当に優しそうで、車や身なりからお金持ちの雰囲気が漂っていた。
由貴ちゃんだけ幸せになるなんて許せない・・・。そう心から思った。
そんな事思っていると、トントンと肩を叩かれた。振り向くといつもより、お洒落な服を着て髪の毛をアップにしている由貴ちゃんが立っていた。
『莉愛ちゃんどうしたの?こんな所に呼び出して』
と階段の踊り場で息を切らした由貴ちゃんが居た。
私はニコリを微笑み
『今日で、由貴ちゃんとお別れだからさ。コレあげる!』と文房具セットを渡した。
由貴ちゃんは嬉しそうに笑い
『ありがとう!いいの?これ新品だよ?あっ!てかこれ!』と悪っ子の様な笑顔で私を見てきた。
『そう!これはアレだよ!』そう言って私も微笑んだ。
そう、数か月前に近くの文房具屋さんで由貴ちゃんが万引きした文房具セットだった。
その後、万引きしたお店の人が施設に誰か、分からないけど
施設の子に万引きしたと言いに来たのだ。
由貴ちゃんは自分が万引きした癖に怖気づいて私に隠して欲しいと頼んできたのだ。その時は「友達」だから隠してあげたんだ。
『もう時効でしょ?全部忘れる為に握手しよ!』そう言って由貴ちゃんに手を差し伸べる。
階段の下に由貴ちゃんの里親が来ている事を確認した上で・・・。
私の手を嬉しそうに握る由貴ちゃん。
私は微笑んだ。微笑んで小さな声で言った。
“許さない・・・。私より幸せになるなんて”
私は握られた手を振り離し、宙に浮いた。
『莉愛ちゃん・・・・!!』慌てた顔をする由貴ちゃんの顔が微かに見えて、私は微笑んだ。
微笑みながら宙を舞い、私は階段から勢いよく音を立てながら転げ落ちていった。