太陽と月

ドンドンドンドン!!


私は勢いよく階段から真っ逆さまに転げ落ちた。


勿論、終着点となる1階に有希ちゃんの里親2人と園長先生が居るのを分かっていたから。



『キャーーー!』


里親になる母親の女性が口を押さえて叫び、父親の方が慌てて私の方に駆け寄って来た。


『君!大丈夫か?』と私の上半身を起こし、2階の踊り場にいる有希ちゃんを見て絶句しながら

『まっまさか…有希ちゃんが!?』
そう呟いた。

『ち…違う…私は何もしてない。』
有希ちゃんは泣きながらその場で首を横に振っていた。


私は痛みに耐えながら、上半身を起こしてくれた男性に言う。


『ゆ…有希ちゃんを責めないで下さい…』そこからはあまり覚えていない。


気付けば、私は先生が寝泊まりしている部屋に寝ていた。


目が覚めると、心配そうに私の手を握っている遥先生がいた。


『遥先生…?』名前を呼ぶと


『ゆ…莉愛ちゃん!?大丈夫!?何処か痛いところは無い?』泣きそうな声で私の手をギュッと握ってくれた。

頭が痛い…そう思い頭に手を伸ばすと、グルグルと包帯が巻かれていた。

左手にも包帯やらガーゼ処置が施されていた。


階段の1番上から落ちたんだから仕方ない。


私はそんな事より、1番気になっていた事を聞いた。


『遥先生、有希ちゃんは?』
そう問いかけると遥先生は


『あのね、莉愛ちゃん。莉愛ちゃんが元気になったらでいいから、南山さんが少しお話を聞きたいって言ってるの。南山さんって有希ちゃんの里親候補の方よ。』


私は下を向いてギュッと唇を噛んだ。


そんな私の頭を撫でてくれる遥先生。


『結愛ちゃん。大丈夫よ。遥先生も付いてるからね。あの時、何があったのか正直に答えてくれる?』


私は下を向いたまま頷いた。


『結愛は偉いね。ありがとね。』そう言って遥先生は自分の胸元に私の頭を持っていき背中をポンポンと叩いてくれた。


私は思わず笑みをこぼした。


それは遥先生の暖かさにじゃない。


きっと…


マリア様にお祈りした願いが叶うからだ。


“願わくば…有希ちゃんの里親の話がなくなりますように”
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