太陽と月
次の日、談話室に呼ばれた。
そこには南山さん夫婦が座っていた。私が入ると、真っ先の怪我の心配をしてくれた。
『もう大丈夫です』そう答える私に、南山さんは『それは良かった』と小さく微笑んだ。
しばらくして、南山さんが『莉愛ちゃん、正直に答えて欲しいんだ。僕の仕事は公安系でね、家族に悪い事をする人がいる事は許されない事なんだ』
そう言って南山さんは悲しそうに微笑んだ。
隣に座っていた、遥先生がテーブルの下で私の手をぎゅっと握ってくれた。
私は小さく深呼吸をして口を開く。
『私・・・有希ちゃんの・・友達だから・・・だから・・』
涙がこぼれる。この涙は何?
それでも言葉はスラスラと口から出てくる。
『友達だから黙っていようと思っていたの。数か月前に有希ちゃんが、文房具屋さん万引きしたって聞いて。本当は・・・言わないとダメだって。いけない事だよって言おうと思ってたの。』
私の言葉を黙って聞いてくれる、南山さん夫婦。
『今日でお別れだから、勇気を出して言ったの。もう万引きなんかしちゃダメだよって。そしたら・・・・そしたら・・・・。』
そこまで言ったら遥先生が、私の手を握り直して
『もういいでしょ?ここからは、南山さんが見ていた通りだと思います。』
そう。下から見ていたら、まるで有希ちゃんが私を階段の上から突き飛ばした様に見えた筈だ。
南山さんは大きくため息をつくと、悲しそうな顔で私に微笑みかけてくれた。
『正直に話してくれてありがとう。辛かったね。』
私は首を横に振った。
奥さんの方は目にたくさんの涙をためていた。
『莉愛ちゃん、ありがとう。先生達は南山さんとお話があるからお部屋に戻ってて。』
そう園長先生が私を部屋から出ていく様に言った。
私は小さく頷き、南山さん達に会釈をして部屋の扉に手をかけると
『莉愛ちゃん』
振り向くと、真面目な顔つきをした南山さんが口を開いた。
『莉愛ちゃん、僕はね長年、公安の仕事をしているんだ。人を見る目だけは自信があった。でも今回は・・・・残念な気持ちで一杯だ。ねぇ、莉愛ちゃん。人は悪い事をすると必ず、自分に返ってくるよ。因果応報って言うんだ。』
心臓がドキドキした。もしかして・・・そう思っていると笑顔に戻った南山さんがいた。
『今日はありがとう。どうかこれから君の人生が、正しい道である事を願っているよ』
私は何も間違っていない・・・・。