太陽と月


『私は…私は…』


言葉が詰まる。そんな私に颯介は


『椿はこっち側の人間だよ。いい子の椿は嘘っぱちだ。』


そう言って微笑んだ。


『私は…私はそっち側の人間…』


そう呟く私の手を取る颯介。


相変わらずヒンヤリとした手だった。


何の温もりも感じ取れなかった。


『今、椿がいる場所は奈落の底だね』


奈落の底…?


『奈落の底は暗くて、光が一切見えない。とても怖くて死にたくなる。でも死にたくないとも思う。』


そう呟く颯介。


『奈落の…底…?』


お昼の陽介の言葉が頭の中で響く。


“俺がお前を何度でも奈落の底から連れ出してやる”


そんな私の思いをかき消す様に颯介は言った。









“僕が一緒に奈落の底まで落ちてあげる”


そう言って貴方は微笑んだ。



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