太陽と月

颯介は微笑みながら胸ポケットから煙草を取り出し、火を付けフゥーと煙を吐く。


『ちょっ…!未成年でしょ?』
驚いて煙草を取り上げようとすると


『椿も吸ってみる?』


そう言って咥えていた煙草を私の口元に持ってくる。


ゲホゲホゲホゲホッ


むせ込んでしまう私を見て、クスクス笑う颯介。


『直ぐに慣れるよ。そして抜け出せなくなる』


そう言って美味しそうに煙草を吸い続けた。


私は黙って颯介の隣にいた。


颯介は1本の煙草を吸い終わると、携帯灰皿に煙草をギュッと押し込む。


月の光がおぼろげに光っている。


『そっ颯介は…』


何か話さないとと思い、声を出すも続かない。


『…椿はさ、母親に会いたい?』


昼間の陽介と同じ事を聞いてくる。
同じ事を聞かれているのに、何故か全く違う事を聞かれている感覚に陥った。


『…あっ会いたい!あのね…大人になったら陽介とママを探すの!』


そう言うとふっと笑う颯介。


『椿?僕の前ではいい子でいる必要ない。僕の前では…誰よりも貪欲で醜い、椿でいていいんだよ?』


どうして、こんなにも酷い事を言われているのに、目が離せないんだろう。


『…でもっ私はママに会いたい!』


過去もママも捨てた筈だけど…会いたい。


< 53 / 230 >

この作品をシェア

pagetop