太陽と月
美月は寮の部屋の片付けがあるからまた明日ね!と笑顔で教室を後にした。
クラスメートがチラチラとこちらを見ていたけど、私も陽介と並んで教室を出た。
2人で他愛ない話をしながら校門までの道のりでも、周りの生徒がこちらをチラチラと見る。
「俺達。注目の的だね。やっぱあのスピーチマズかったかな?」そう言いながらも満足そうな表情を浮かべる陽介。
それに、比べて私は後悔をしていた。
何で、“親に捨てられた”なんて全校生徒の前で言ったんだろう。考えれば分かる筈だった。
あんな事を言えば、周りから何を言われ、どう思われるのか。
その大半は同情や、心ない言葉をぶつけられる事を。
事実だけど隠す事も勿論出来た。
でもあの時、颯介の目が私を離さなかった。
“いい子の椿なんて嘘っぱちだ”そう言われて居る気がしたんだ。
そう思いながら歩いていると
「おっ!颯介!」隣で陽介の声がした。
ふと前を見ると颯介が歩いていた。
こちらを振り返る颯介。
颯介はやっぱり私の方は一切見ず陽介に声をかける。
「陽介!今日の夕飯パスってマリ子さんに言ってて!」
それだけ言うと、また歩き出す。
そんな颯介に駆け寄り肩に手を回す陽介。
「つれないなー!で!今日の俺達のスピーチどうだった?」そう聞いた。私は自分が話しかけた訳でもないのに、何故かドキドキしながら颯介の返事を待つ。
「僕に迷惑がかからなければどうでも」と冷たく言い放った。
「またまたー!椿が言ったあと真っ先に拍手してたじゃん!」そう言う陽介に表情一つ変えず
「あぁ。寒い事言ってるなぁって思ったから。どっかのいい子ちゃんみたいでさ」と私をちらっと見た。