太陽と月
2人だけの秘密
おぼろげな月が今日も出てると思い、窓を開けると
やっぱり居た。
ベンチに座る颯介が。
隣に行きたい、そう思った私はスエットの上にパーカーを羽織り降りて行った。
「そ…颯介!」私が呼ぶと振り向く颯介。目が合う。
「煙草吸いに来たの?」と少し微笑んでくれる。
やっぱり。颯介は月が出る夜は私と目を合わせ話してくれる。
「未成年だから吸わないよ!」そう言う私に
「いい子ちゃんぶっちゃって」と笑う。
少しカチンときた私は颯介が咥えていたタバコを奪い取り、自分の口元に持っていく。
でもやっぱり大きくむせた。
そんな私を見てクスクス笑う颯介。
「直ぐに慣れるよ」そう言って新しいタバコに火をつけて咥えた。
「今日、ありがとう!」突然の私のお礼に不思議そうな顔をする颯介。
「何が?」
「私のスピーチの後に真っ先に拍手してくれたでしょ?あれ、嬉しかった!」
あの時、颯介が拍手をしてくれなかったら私はあの場から逃げ出していたと思う。
「あぁ。初めのスピーチ、クソみたいだったよね」そう笑う颯介。
「クソって…」
でも、本当に奇麗事しかない内容だったと思う。
「あのね!私友達出来たんだ!」颯介に聞いて欲しくて美月の事を話した。
最後まで黙って聞いてくれていた颯介が口を開く。
「ねぇそれ本当の友達?」
そう目を細める。
「友達だよ!凄く良い子だと思う!」美月の笑顔が浮かんだ。
「いい子ね。本当の椿を知っても友達でいてくれるのかな?」
本当の私…?
「だって椿はいい子なんかじゃないでしょ?友達が自分より幸せだったら許せない筈だ」
酷い事を言われていると分かっていても何もかも反論出来なかった。
「…み美月は友達だもん。」
そう動揺する私の目をジッと見つめて
「そう。それは楽しみだね。でも、そのお友達は本当の椿を知ると離れていくよ。そしたら…」
一瞬、月を見上げた颯介。
今日も雲が少し月にかかっている。
「椿はまた独りぼっちだね」そう颯介は微笑んだ。