太陽と月

少し驚いた。待っていて何だけどまさか颯介が私に話かけてくるとは思っていなかったから。


「そ…颯介!さっき松島先生に言ってくれてありがとう!」そう言う私をチラっと見ると近付いてきた。


かなりの至近距離で少しドキドキした。


「…だって椿が嘘をつきたいのは、自分の為でしょ?自分の身だけを守る為の嘘でしょ?周りの…陽介の気持ちなんてお構いなしで、自分だけの事を考えてるからだよね?」そう言った。


“自分だけの為の嘘”


そう言われ、ドキっとした。
私は、私を受け入れてくれた陽介の気持ちなんて考えず、自分の身を守るだけの為に嘘をついたのは真実だったから。


それが、どれ程陽介を傷つけてるなんて気付いてもいなかったんだ。


黙る私に颯介は続ける。


「自分の事しか考えていない椿を僕は守ってあげるよ。一緒に嘘をついてあげる。」そう微笑み私から離れて行った。


図星だった。
自分が周りからこれ以上、変な目で見られたり噂を立てられるのが嫌で嘘をついた。


その場に立ち尽くしていると、予鈴が鳴り慌てて教室に戻る。


何とか本鈴には間に合い席に着く。


「椿!大丈夫やったんー?松島に何か言われたんー?」後ろの美月が聞いてきたけど、適当に誤魔化した。


いつまでも、颯介の言葉が頭から離れなかった。
陽介に申し訳ない事をしたと思いながらも


こんな私を、守ってくれると言った颯介の言葉に何故か安堵していた。
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