大きな子供
ピシッと眉上で揃えられた前髪の隙間から、春の日差しが目に入る。
朝の空気は少し冷たく、クリーニング仕立てのブレザーはパリッとしている。
「青ちゃん早いわね、学校?」
「おばさん、おはようございます!」
「相変わらず、しっかりした子ねえ、うちの健にも見習わせないと。健まだ寝ていたけど、遅刻かしら?」
話しかけてきたのは、幼馴染の健の母で、幼い頃からの私を知っている人。
「いえ、私は1時間早く登校しているのでっ!」
「あら、そう。同じ年のはずなのにどうしてこうも違うのかしら。帰ったら言って聞かせないと。」
そんな風に頰に指を当ててぷうっと怒るおばさんは小さな頃から憧れの人だ。
絵に描いたような母親っぷりなのだ。
そんなおばさんと他愛のない話をして別れて、私はまた凛として歩き出す。