大きな子供
「もうっ!バラさないでって言ってるじゃないっ!」
「ごめんごめんっ」
顔の前に両手を付き合わせていたずらっぽく笑う健は、その手をそのまま私の頭に乗せる。
ここは人があまり入ってこない数学準備室。私と健の秘密の避難場所だ。
「もっと人に甘えるところ見せりゃいいじゃん。」
「無理よ…やり方がわからないわ」
そう言いながら、私は健の肩におでこをつける。
「俺にはこんなべったりなのに?」
「誤解されるようないい方しないで!私は、温もりが欲しいだけよ、ほら、少し今日寒いから。」
「へいへい。」
そう、私の秘密とは、うまく人に甘えられないこと。幼い頃は両親が忙しく、甘えたい時に甘えられなかった反動が今頃、こじれてこのざまだ。
幼馴染の健にだけは、こうして素直に甘えることができる。最近は健が茶化すものだから少し恥ずかしいけれど。
幼い頃は寂しくなるたび、こうして健に頭を撫でてもらったものだ。